2025年問題をご存知でしょうか?
日本国民の5人に1人が75歳以上の後期高齢者になる
超・高齢化社会ってやつです。
実際、街を歩いていても高齢者が多いですよね。
自分はミドルシニアですが、皆さん、元気で驚きます。
我々があの年代になる頃は資金も体力もないだろうから、長生きはしたくないと願ってしまいますが。生きてしまうのですから長生きリスクから目を背けてはいけません。
うちの娘達は祖父が脳梗塞で倒れたこともあり、生と死に関する絵本も読み聞かせてきましたが、自分事として興味のある認知症に関する話も共に読んできました。
できることが増えていく幼児に対し、できないことが増えていく老人の話をしても理解できるのか不明ですが。
別人のようになってしまった家族を支える「周囲の人々」を描いた絵本を紹介したいと思います。
認知症と向き合う家族を描いた絵本
ばあばはだいじょうぶ
病気の進行に伴って、だんだんとできないことが増えていく認知症。
それから目をそらしていた主人公(孫)が、認知症を受け止め、小さな一歩を踏み出す瞬間を描いた絵本です。
子供向けの絵本とはいえ、リアルな経験に基づいた物語
認知症と向き合うにはどうしたらいいのか?
親子で話し合うきっかけとなる一冊です。
わすれないでね ずっとだいすき
こちらも実話ベースの絵本です。
こちらは最初から祖母の認知症に理解がある孫とのやりとりが描かれています。
5歳の頃の記憶があるのに、最近のことを覚えていられない。
目の前の子供が誰なのかも分からない。
ボタンをとめる能力すら失われていくのに、愛情は脳のどこかに残っていて。
ヒトは最後まで愛する気持ちを失わずにいられるのだと感じられる素敵な絵本です。
わたしをわすれないで
これも孫から見た認知症の物語です。
「ばあばはだいしょうぶ」と内容は似ていますが、描き方がソフトで。
このジャンルの話が初めてのお子さんにおすすめです。
家族のことも
自分のことも
頭の中から消えて、分からなくなっていく。
そんな老人達が入所する施設は、姥捨山なのか?
我が家では、この本から色々なことを語り合いました。
忘れても好きだよ おばあちゃん!
これはアルツハイマー型の認知症になってしまったおばあちゃんの物語です。
これも孫視線で描かれており、認知症の症状を記憶が木の葉のように舞い散って消えていくと説明しているところが分かりやすいです。
認知症の大半はアルツハイマー型だと言われています。
家族が当人とどのように接したらいいのか?
そんなことが描かれていますから、認知症初期の家族を介護する際に読み聞かせるとよいかもしれません。
とんでいったふうせんは
これも孫から見た認知症の物語。
ただ、こちらの絵本はおじいちゃんの思い出が消えていってしまうお話です。
おじいちゃん の素敵な過去
思い出を乗せた風船が次々と飛んで無くなっていく様子は悲しいのですが、失われた記憶が子や孫に引き継がれていく様子が微笑ましいです。
認知症を学べる絵本
ここからは「絵本こどもに伝える認知症」シリーズを紹介します。
認知症になった家族とのやりとりを描いているのは同じなのですが、このシリーズは学び要素が強めとなっています。
幼児ではなく児童向けの絵本ですので、家族が認知症を発症したら初期の段階でこのような本を読み聞かせ、偏見が育たないよう対策するのがよいかもしれません。
おじいちゃんの手帳
認知症になると人は「自分が一番楽しかった時や一生懸命に仕事をしていた頃に戻る」と言われています。
私にとって、最も楽しかった時代はいつだろう?
子供の頃からストレスが多くて黄金期なんて無かった気がするけれど、私にも戻りたい時代があるのか?
そんなことを考えさせられる絵本です。
この絵本も孫視点なのですが、他の絵本と違うのは、登場するのが人間ではないということです。
孫のかーすけ君はカラスで、彼のおじいちゃんは校長先生をしていたカラスです。
脳内の時間軸が逆行し校長先生に戻ってしまったおじいちゃんに対し、かーすけ君は神対応をします。
認知症が進行すると、失語して相手の話が理解できなくなったり、自分の気持ちを伝えられなくなることがあるそうです。そんな時の適切な行動が知れる本です。
赤ちゃん キューちゃん
「おじいちゃんの手帳」と同様、一番幸せだった時代に返ってしまったおばあちゃんの物語です。
アルツハイマー病について簡単な説明があり、その症状が物語の中で紹介されています。
今がいつなのかが分からない
目の前の人形が我が子に思える
傍目には奇行にしか見えない行動が増えるけれど、周囲の対応次第では幸せな時間の中で生きられるようです。
そのように考えると、認知症も悪くありませんね。
周囲は大変ですが…。
認知症を描いている絵本の中では悲壮感が少ない本という意味でもおすすめです。
一本の線をひくと
一本の線をひくと
この場所が二つに分かれます
この絵本が認知症を描いた作品と知っていて読み始めた大人ならば、ドキッとするような物語の始まり方です。
誰でも何らかの偏見は持っていると思うけれど、その一線は自分で引いたものです。
認知症の人は「あっち側の人」なのか?
子供に読み聞かせるには深すぎる内容だと思います。
赤いスパゲッチ
この絵本が珍しいのは、若年生認知症を描いた作品ということです。
認知症は高齢者の病気だと思われ気味ですが、ミドルシニアにおいても発症しうるのです。
最後には「こどもに伝える認知症シリーズ」の他の作品で出てきた登場人物による質疑応答があり、認知症あるあるが議論されます。
認知症を煩う家族に対し、どのように接すればいいのか?
そんなことが分かります。
認知症の相談は病院や家族の会だけでなく、地域包括支援センターなどでも可能なのだそうです。
家族だけで悩まず、地域の皆で支え合っていきたいものですね。
じいちゃん、出発進行!
「絵本こどもに伝える認知症」シリーズ最終巻です。
この絵本が斬新だと思ったのは、孫と認知症の祖父の体が入れ替わるところです。
祖父の体に憑依した子供は時計が読めなくなり、時が書けなくなり、言葉がスムーズに出なくなります。自分がどこにいるのか分からなくなったり遠近感がつかめず転倒する生活に、祖父になってしまった主人公は驚きます。
認知症を描いた絵本で登場人物が死に至るのは珍しいのですが、この絵本では大好きなおじいちゃんは死んでしまいます。
認知症患者の死因で多いのは、肺炎なのだそうです。
脳の機能不全で死ぬというよりは感染症が死因なことが多いようです。
ラストは何とも言えない静けさを感じる終わり方なのですが、認知症患者から見た世界を理解するのに役立つ本ですのでおすすめです。
さいごに
高齢化社会ということは、認知症患者の人口も増えるということです。
診断が出るレベルかどうかはさておき、90年近く生きれば脳の処理能力が落ちるのは仕方ないですし、機能障害が発生するのは他人事ではないでしょう。
積極的に読み聞かせたいジャンルの内容ではありませんが、認知症は不幸ではないことを子供のうちから知っておくことが大事だと思います。